屋島山上拠点施設 [建築設計競技], 香川/Kagawa (2015)

構成

屋島山上は、メサ地形となっていることもあり、緑だけでなく周辺には採石場も多い。その山上の拠点施設として、石と緑に覆われた地表が広がっている上に、あたかも大きな葉(もしくは貝殻)が数枚あるようなそんなイメージで風景をつくりたいと考える。

地表は、主に石(庵治石)と緑で構成され、ランドスケープとして、内・外、屋根がある・ない、に関わらず、敷地全体高低差を緩やかに繋いでいる。石はところどころ隆起しており、機能(ベンチ、カウンター、倉庫、トイレなど)を持つ。緑は、植栽や木、芝生やチップなどといったさまざまなスタイルで石と融合されている。

建築は大きな葉のようなスラブ(地面にあるスラブ、地面から少し持ち上がったスラブ、さらにその一辺を高く持ち上げられたような反ったスラブ) が敷地に折り重なるように構成されている。また大きく南北の二棟に分けられ、それぞれ一番高く持ち上げられたスラブはこの建築の屋根として、それぞれが違う傾きやスケールをもつことで敷地だけではなく、風景に馴染むようにデザインされている。そのスラブ下面である天井面を光沢のある白(讃岐三白や酸性凝灰岩がモチーフ)に仕上げ、曲率勾配のある面に反射する風景を取り込んでいる。スラブ上面である屋根は軽くてメンテナンスレスな金属板、床は内外とも同じフローリング、といった機能性と景観を意識した素材を選択している。スラブ下空間の内外は主にガラスで仕切られるが、単純に透けて見えるというだけではなく、中が見えにくいように反射率の高いガラスを随所に用いることで外の風景を映し出す。それは場所によって異なるシーンをつくり出し、何気なく歩いている人に突然ドキッとする経験を与える。


ランドスケープ

自然地表(石と緑)がそれぞれ溶け込み合う風景は、元来繊細な環境条件の上に成り立っている。現在の広々として強い日差しと囲繞する樹木のない光景は、メサ本来の姿とは異なっている。通常、岩山に樹木を植栽することは管理上得策でないが、地表に保水性が高く、根が広く伸びやすい植栽基盤素材(パワーミックスやJ.ミックスなど)を使用することで、樹木が時間をかけて成長しやすい環境を作る。これによって、山上では難しい大きな木へと育てることも可能である。また、自然地表の石と、緑・芝生をバランス良く融合させながら、歩きやすいところ、バリヤフリーでアクセスするところ、足の裏や手で自然をのんびり感じられるところ、広場のようなたまり、といったように、用途に適した地表のテクスチャを配置する。裸地となる地表には松葉を用いたマルチングを敷き詰めることで乾燥を防ぎ、優しく涼しい木立が来訪者にとって心地良く滞在できる空間をつくりだす。


構造

建築の骨格は、繊細な土壌を傷めない様、大空間を軽快に覆うことができる鉄骨造として計画した。スラブと柱には、重力や外乱(地震・風など)に対して効果的に抵抗力を増す形態を与え、素材の長所をさらに伸ばす工夫を行っている。具体的には、スラブに関しては、格子状のリブを両面から鋼板で挟み込んだサンドウィッチパネル構造で構成し、個々の柱間距離に応じた“たわみ”を付与することで、その湾曲した葉の様な形態により、重力に逆らって薄く軽やかに浮遊するスラブを実現している。また、そのスラブを要所で支える柱に関しては、場所に応じて径や傾きを変えることで、主として外乱に対する骨格の強度と剛性を増強させている。これらの工夫は、同時に、画一的な骨格ではなく、周囲の風景に馴染む骨格をつくり出すことにもつながっている。

用途  : 屋島山上拠点施設

構造設計  : 株式会社 エス・キューブ・アソシエイツ (京都)

ランドスケープ : 武田計画室 (京都)

製作協力  : 田中俊之、畑谷直樹、赤松萌、嶋本愛弓、米澤政人、中満夏美、山中梢子