鶏冠井の住処 / The Final House in Kaide, 京都/Kyoto (2017)
この住宅は老夫婦の終の住処である。敷地は住宅地の袋小路にあり、東と南に隣家が近接し、そして北に里道、西は畑が広がりその向こうには旧家が並ぶ。上からは愛宕山や西山連邦が望めて、その奥に夕陽が沈んでいく。
外壁は最長9mを越えるガルバリウム鋼板の立平を継手無しで全面に貼り、屋根も同じなので、モノコックで量感のある印象を与えている。屋内は壁と天井を白、床はフローリング(ウォールナット)と、できるだけ仕上げに使用する素材を少なくすることで、建物全体をシンプルにまとめている。
1階は階段と一体になったリビング・ダイニングを中心に、キッチン、洗面・浴室、トイレ、和室、テラスを配し、2階は家族の個室とゲストルーム、3階はロフトのようなワンルームとなっている。また将来、1階だけでも生活できるようになっている。玄関に内縁のベンチ、階段下に掘り炬燵的なミシンの作業スペース、薪ストーブ、四周に置かれた植木や植栽など、老後のライフスタイルを静かにゆっくりと快適に楽しめるような仕掛けがそこかしこに配されている。